• 兄弟姉妹の慰謝料請求権


http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070603-00000113-yom-soci

水戸市で2002年11月、ダンプカーにひき逃げされて死亡した大野睦実さん(当時10歳)の両親と妹が、運転手の男(39)に損害賠償を求めた民事訴訟で、水戸地裁(中川正充裁判官)が男に対し、一緒にいて事故を目撃した妹(12)にも慰謝料400万円の支払いを命じたことがわかった。

 原告代理人によると、民法には兄弟姉妹の慰謝料請求権を認める明文規定がなく、認められたのは異例という。

これを見る限り、直接認めたみたいですね
というのも、

民法711条
本人以外の慰謝料請求権について規定する、民法711条において、
他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。

「父母、配偶者及び子」
妹は、これにあたらないわけで、民法上当然には請求権が認められないわけでした。

この点、最高裁判例は、

 不法行為による生命侵害があつた場合、被害者の父母、配偶者及び子が加害者に対し直接に固有の慰藉料を請求しうることは、民法七一一条が明文をもつて認めるところであるが、右規定はこれを限定的に解すべきものでなく、文言上同条に該当しない者であつても、被害者との間に同条所定の者と実質的に同視しうべき身分関係が存し、被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けた者は、同条の類推適用により、加害者に対し直接に固有の慰藉料を請求しうるものと解するのが、相当である。

とする一般論を述べた上で、

本件において、原審が適法に確定したところによれば、被上告人鈴木美代子は、信子の夫である被上告人鈴木房雄の実妹であり、原審の口頭弁論終結当時四六年に達していたが、幼児期に罹患した脊髄等カリエスの後遺症により跛行顕著な身体障害等級二号の身体障害者であるため、長年にわたり信子と同居し、同女の庇護のもとに生活を維持し、将来もその継続が期待されていたところ、同女の突然の死亡により甚大な精神的苦痛を受けたというのであるから、被上告人美代子は、民法七一一条の類推適用により、上告人に対し慰藉料を請求しうるものと解するのが、相当である。(最決昭49.12.17)

として、被害者の夫の妹(本件以上に関係の離れている場合といえようか)につき、民法711条の類推適用という形で認めてたわけです。
今回は、あくまで地裁判断ですので、既判力は認められないわけですが、今後の判決に少なくとも影響があるといえそうです。
まぁ、実質論として言えば、「父母、配偶者、子」と、「兄弟姉妹」を区別する実益はないのかと。

類推するか直接適用するかの是非はともかく、請求権自体は認めて当然といえましょうか。